40人が本棚に入れています
本棚に追加
朝食を食べている少年を見ながら、僕は日曜洋画劇場で録画したピアースブロスナンが演じる007を見始めた。
「ジェームズボンドは矢張りショーンコネリーが一番いいと思っているけど、ピアースブロスナンも悪くはないな。しかし、ジェームズボンド役に後継者は出てくるのだろうか」
そんなことを思いながら、トーストを頬張る。
すると、少年がテレビを見始めた。
「僕も、こうなりたい」
「ん?」
「このお兄さんになりたいんだ」
「ジェームズボンドじゃなくて?」
「Qって名乗っているお兄さん」
「そうか。そういえば、君の名前を聞いていなかったな」
「名前はあった筈だけど忘れた。だから名前なんてどうでもいいんだ」
「そうだ、君にうってつけの名前があるんだ」
「教えてよ」
「Qだ」
「もしかして、このお兄さん?」
僕はビデオの画面を一時停止させる。
「そうだ。君は頭も良さそうだし、Qを名乗るのも悪くないのでは?」
「なるほど。そう言うのって、なんだかカッコいい」
こうして、あの少年はQを名乗ることにした。
――真逆、世間を騒がせていた藤堂商事の消えた少年だとは知らずに。
最初のコメントを投稿しよう!