Final Phase Stray Sheep

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Final Phase Stray Sheep

 僕は夢を見ていた。  母親に殺される夢だ。  「優希、あなたなんか産まなきゃ良かったわ」  虚ろな目をした母親。  か細い指が、僕の頸動脈に触れる。  「優希、あの世で父さんによろしく」  僕は(まぶた)を閉じる。  魂が抜けていくような感覚を覚えた。    ――て!  ――きて!  ――起きて!  誰の声だろう。  母親の声ではない。それは分かっていた。 「戸神君、起きて!」  そこで、僕は目を醒ました。  躰には、ロープが巻かれていた。それは仁美も同じだった。 「私たち、ヘマしちゃったね」 「いや、仁美は悪くない。悪いのは僕だ」 「戸神君は何も悪くないよ。私達2人の責任と言っても過言じゃない」 「それはそうだな。ところで、この先どうする?」 「躰を拘束されている以上、助けを呼ぶのは困難だね」  その時だった。  東京連合のリーダー、長嶋茂徳が僕たちの目の前に現れた。 「おはよう。裏切り者。君たちには罰として、躰を縛らせてもらった」 「くっ・・・」 「お嬢ちゃん、静かに。ところで、裏切り者には裏切り者らしい最期(さいご)を用意した。それがこの爆弾だ。当然、君たちは躰を縛られているから解除できない。助けを呼ぼうにも、海ほたるの真ん中に警察が来るとは思えない。つまり、君たちはゲームオーバー。この爆弾が爆発したらドッカーン。海ほたるは火の海に包まれるだろうな」 「そんな・・・」 「巫山戯(ふざけ)るなッ!君は何が目的なんだッ!」 「さっき話したよね?裏切り者の抹殺と海ほたるを火の海に染めるのが僕の役目だ」  長嶋茂徳に僕の話は通じない。そう思った。  なんだか、アタシ、厭な予感がするんだよね。  なんか、優くんが誰かに攫われたような気がして。  テレビには明石家サンタが映っている。  私だって、今年は不幸なことが多かったから明石家サンタに応募したいぐらいだ。
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