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けれども、そんなアンハッピーな状態だった自分を救ってくれたのが優くんなのは紛れもない事実だ。だから、なんとしても優くんを救わなければならない。
でも、アタシに出来ることなんてあるのだろうか。
自問自答を繰り返しては、頭を抱える。
アタシは優くん程賢くない。
だから、正直「詰み」を感じていた。
ふと、携帯電話の待ち受けを見ていた。
――そう言えば、最初にデートしたのは海ほたるだったな。
海ほたるは、神奈川県川崎市と千葉県木更津市の境目にあるウォーターフロントで、デートスポットとしては非常にベタな場所だ。けれども、アタシにとっては甘酸っぱい思い出が詰まっている場所だ。
待ち受けの写真はその時に撮った2ショットの写真だ。
「なぁ、川崎って君の出身地だよな。どうして東京に逃げ出したんだ」
「父親から性的虐待を受けていて、それが厭で東京に来たんだ。でも、やっぱり川崎の海を見ると心が落ち着くんだ」
「平塚や湘南ならまだしも、川崎の海なんて工業地帯だぞ」
「それでもいいんだ。故郷の潮風を浴びると、心が落ち着く」
「そうか。実のところ、僕は他人が嫌いだ。けれども、君といるとなんだか落ち着くんだ」
「優くん・・・」
アタシは、優くんに抱きしめられた。
優くんの心臓の鼓動は、なんだか優しく感じた。
そして、そのまま優くんの鼓動を感じながら、アタシは瞼を閉じた。
――もしかしたら、優くんは海ほたるにいるかもしれない!
アタシは必死で警察に電話をした。
「もしもし!警察ですか!至急、海ほたるに行ってください!」
「我々は東京連合の取り締まりでそれどころじゃないんだッ!それに海ほたるは警視庁の管轄ではないッ!千葉県警と神奈川県警の管轄だッ!」
「じゃあ、千葉県警と神奈川県警を呼んでください!」
「仕方ないな。千葉県警と神奈川県警に応援を要請するッ!」
「よろしくお願いします!」
これがアタシに出来るコトだ。
イチかバチか、優くんが海ほたるにいることを祈りながら、アタシは8チャンネルで明石家サンタを見ていた。
「ごうかーく!カランカラン!」
「それにしても、君たちはどうして犯罪組織を立ち上げたんだ」
「なんか反社会組織ってカッコいいかなって思って」
「それだけの理由で、セレブたちを巻き込んだのかッ!」
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