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「まあ、警察に捕まってしまった以上組織としては壊滅に近い状態だけどな」
「そうか。ところで、リーダーである長嶋茂徳の姿が見当たらないが?」
「リーダーなら、裏切り者を始末するとかいってどこかに行った。どこかは教えてもらえなかった」
「裏切り者って・・・真逆、戸神優希と桧山仁美かッ!」
「なんで刑事さんがその名前を知っているんですか?」
「当然だ。捜査に協力していたからな。これは拙い。なんとしてもあの2人を見つけ出さなければッ!」
「刑事さん、無駄ですよ。どこかは教えてもらえなかったけど警視庁の管轄じゃない場所だということは教えてもらったからな」
その言葉に、僕の刑事の勘は働いた。
警視庁の管轄ではなければ、恐らく彼処しかないだろう。
「捜査一課に告ぐ。至急、海ほたるの方まで行くんだッ!」
「赤星刑事、海ほたるは警視庁の管轄外です」
「いいんだ。千葉県警と神奈川県警に応援を要請するから問題ない」
しかし、僕には海ほたるで2人を救う前にやらなければいけないことがある。
「阿部慎二、君を窃盗及び殺人の罪で逮捕する」
「刑事さん、どうして僕が藤堂商事の強盗殺人事件の犯人って分かったんですか?」
「それは、君の履いていたスニーカーだ」
事件当日。
僕は気合いを入れるためにナイキのエアマックス95を履いていた。
この靴を履くと、力が漲るような気がする。
だから、僕のお気に入りの靴だった。
5時30分頃。
藤堂商事の社長である藤堂剛を金属バットで殺害した。
しかし、その日は雨が降っていた。
庭の土が泥濘んでいる。
このままだと、エアマックスが泥で汚れてしまう。
僕はなんとかして、殺害現場から逃げ出した。
その時のミスが、やがて刑事に気づかれるとは思わずに。
8時00分頃。
僕は、近隣住民の通報を受けて藤堂剛の殺害現場へと向かった。
明け方に降っていた雨は止んでいた。
しかし、犯人と思しきゲソ痕が残っている。
その独特なゲソ痕を見て、これはナイキのエアマックスだと確信した。
そして、僕は渋谷の靴屋さんを回ってゲソ痕と同じ靴を履いた人間を探し出した。
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