40人が本棚に入れています
本棚に追加
「リーダーが長嶋茂徳なのはご存知の通りだな。各メンバーの前科は・・・強姦に窃盗に暴行。犯罪のオンパレードだな」
「よく見たら、リーダーにも前科がありますね」
「花蓮、善く気づいた。爆弾を製造したとして警視庁の少年部に補導されているとの記載があるな。あと、17歳にも関わらずパチスロ店に入店して補導されたとの記載もある」
「こんなどうしようもない人間に、ついていく人がいるんですね」
「ああ、闇の眷属なんてそんなもんだ」
データベースを作っている途中、僕の心臓の鼓動は大きく脈を打った。
「阿部慎二」
それは紛れもなく僕の小学校の同級生だった。
なぜ真面目な性格の彼が半グレ集団なんかに入ったんだろうか。
僕にそれが分からなかった。
それに、僕の同級生だとしたら阿部慎二はまだ17歳か18歳の筈だ。
一刻も早く、少年課の方で補導してもらわないと拙いことになりそうだと、僕は思った。
10時45分。
渋谷のとある靴屋で、事件現場に残されていたゲソ痕と同じエアマックスを買った顧客を見つけたとの情報を受けて、僕はその靴屋に向かった。
顧客データベースには「阿部慎二」と記されていた。
僕は、彼が東京連合の一員であると確信した。
「そのお客さん、もしかしたら今朝起きた強盗殺人事件の犯人の可能性が高い」
「マジっすか」
「ああ、そうだ。もしかしたらマスコミが殺到するかもしれないが、それだけは覚悟しておいたほうがいい」
「わ、分かりました・・・」
「つまり、君が事件発生時に履いていたスニーカーはエアマックス95。余程の物好きじゃないと履かない代物だ。君は、それを泥で汚していった。そして、ゲソ痕が事件現場にくっきりと残されていた。泥によるゲソ痕は犯罪者にとって事件を犯す上であってはならない禁じ手だ。事件発生当日の天気は雨。そして藤堂剛の自宅の庭園は泥濘んでいた。それだけの話だ」
「刑事さん、降参です」
「大人しく塀の中で反省するんだな。それに君はまだ17歳。いくらでもやり直せるんだ」
「そうですか」
「そうだ。少年による犯罪だから、恐らく報道規制もかかるだろう。だから、君が釈放された時、君を悪い意味で覚えている人はきっと少ない筈」
そう言いながら、僕は阿部慎二の手に手錠をかけた。
そして、応援の警官に阿部慎二を留置所に送るように手配した。
――でも、僕の仕事はこれで終わりじゃない。あの2人を救わなければ。
最初のコメントを投稿しよう!