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そう言ったものの、あの母が簡単にショートステイに行くはずがない。無理強いすれば必ず暴れる。
未だ身の周りの事は出来ているのだから、家で安全に過ごさせる方法を考えなくてはならなかった。
食事は作り置きしておけばレンジで済む。お風呂は認知症特有の症状で入りたがらないから、一人で入る事はない。
そうなると一番気になるのは常用薬の過剰摂取。薬を飲んだか飲んでないかが分からなくなるのだ。
今までは父がさり気なく見ていた。だがその父は入院で不在になる。
勿論、カレンダーに飲んだ時に日付入りのシールは貼らせているが、貼る事を忘れる事も多々ある。
また貼ったとしても日付を間違えている事もあるし、カレンダーを見ると言う動作すら忘れる事もある。
やはり外部の助けが必要だった。
ケアマネージャーのKさんに電話し、アポイントをとる。
入院に必要な物を買い揃えて帰宅し、父を降ろしてKさんに会うために車を走らせた。
Kさんは穏やかな笑顔で出迎えてくれる。その笑顔に癒やされる。
電話で手短に事情は伝えてあった。そして担当ケアマネージャーの契約を結ぶ時に母と会って居るので、母の事も少しは理解してくれている。
『本当はショートステイの方が安心なんでしょうけど、お母様の場合難しいですよね。それで考えてみたんですがお薬の服用が朝夕2回なので、朝にヘルパーさんに服用の確認に行ってもらいましょうか』
薬は1日分を1セットにして日付を書いた袋に入れてある。薬は朝がメインで夜の分は補助的な物だ。最悪夜飲み忘れても支障は無いし、1日分の袋が空になっていればそれ以上の分を出してきた事は無い。
『それに朝ならば一晩一人で過ごしているので、安否確認だと言えば受け入れてくれると思うのですが』
『それでお願いします』
ヘルパーさんに朝の服用とカレンダーに貼る日付シールを確認してもらえば、後は電話で母を誘導する事は可能だった。
しかしヘルパーさんに来てもらうとなると新たにヘルパーさんとの契約を結ばなくてはならない。
スムーズに契約出来るかが問題だった。
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