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連れていきたいのは精神科、受けさせたいのは認知症検査。
ものスッゴくハードル高いのよ。
だって本人は微塵も自分に認知症の傾向があるなんて思ってないんだもん。
最初は世間話程度に、
「そろそろいい年だし、一度認知症検査受けてみたら? 最近じゃ、定期検診みたいに受診する人も多くなってるんだって」
「認知症も早く見つけると、お薬で進行を遅らせられるだって」
と2日に1回は電話で受診を勧めてみた。
そうこうする事、数ヶ月。
母が受診を認めるよりも早く、父の限界が来た。
日に何度も同じ質問をされ、気に入らない事があると喚かれ、物が飛んでくる。そして、その時には気付かなかったが父にも病魔は近付いていた。つまり父に体力的にも精神的にも余裕は無かったのだ。
「S子、このところおかしいぞ。一度認知症の検査受けろ」
父がハッキリと母に言ってしまったのだ。
それからは地獄の日々。いや、今もそうかも。
ともかく検査は受けないと言い張り怒りまくる母。でも日毎におかしな事は増えてくる。そして怒り方もエスカレートしていく。
もはや物が飛んでくるのは当たり前。何はともあれ刺激しないようにと父は貝のように口を噤んだ。
でも父よ、その対応って1番しちゃいけない事の1つなんだよ。
そんな状態が続き半年程。ようやく母を病院に連れて行けるタイミングが来た。
家族は
「これで少しは光が見えるかも…」
と期待せずに居られなかった。
が、しかしだ!
『CT画像も血流検査も年相応ですし、認知症テストも問題ないですね』
医師から告げられたのは正反対の言葉。そして此れが母の印籠になってしまった。
だが、この時点で母の妄想はかなり酷くなっていた。
『年末にはペースメーカーの交換手術があるから』
病院に問い合わせれば、何処にもそんな予定は無い。
『○○ちゃん、百万円くれって言ったよね?』
誰も母にお金の無心などした人はいない。
妹が職場の話をすれば、
『△△さんとお母さん、会った事あったよね? 確かお宅にお邪魔したもん』
△△さんに会わせた事もなければ、妹ですら△△さんのお家を知りません。
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