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この程度の妄想ならと思われるだろうが、うっかり訂正しようものなら地獄をみる。
『私がボケて分からないと思って、騙そうとしている』
と、喚いて暴れるのだ。
そして行動にもおかしな事が…
5つ程しか入っていないバッグの中を何時間も確認し続ける。
捨てたレシートをゴミ箱から拾ってきて、これまた数時間見続ける。
服用薬の仕分けに3日間かかる。
冷蔵庫に同じ物がいくつも入っている。ある事を忘れて同じ物を買い続けるのだ。
こんな調子でおかしな事がいくつもある。勿論、指摘しようものなら、同様に喚いて暴れる。
それなのに認知症の診断はくだらない。
認知症テストや検査って一体なんなんだ。何の役にもたちやしない。
それが今年の6月の話だ。
そして時を同じくして父の異変に気づいたおかあちゃん。
やけに痩せたのだ。その上、手が震えている。
第一にパーキンソン病を疑い脳神経外科へ。
問題なし。
次に精神科へ。
軽度の介護鬱と診断。
だが、異常に体重が減った説明がつかない。嫌な予感しかしなかった。
父を総合病院へ連れて行き、体中の検査が始まった。
先ずは以前患った胃や食道。
この2箇所に問題は無かった。しかし、撮った画像に偶然写った影。
肺が真っ白に写っているのだ。
最終的な検査結果が出る前に、おかあちゃんは仕事の始末を始めましたよ。
地域型デイホームやイベント等での出張講師の仕事が軌道に乗り始めてたんですけどね。そんな事言ってられません。
頂いていた講師の仕事を整理し、断れるものは断り、こすものはこなし、何とか8月末には僅かな予定を残すだけの状態に。
そして迎えた検査結果。
肺癌ステージ3 間質性肺炎を併発
治療法は抗がん剤のみ。手術も放射線治療も間質性肺炎があるから選択肢にすらならない。
そして抗がん剤も効果があるか分からない。もしかすると抗がん剤で間質性肺炎が酷くなり命がけの治療になるかもしれない。
余命は半年から1年。治療したとしても2年や3年はない。
突き付けられた結果に崩れそうになった。
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