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go to heaven
そんな言葉が頭に浮かんだ。
三四郎島へつながる道が 年に何回か
海の中に出来る
その時間を何年も待ちかねたように人々がわらわらと集まる。
老若男女、それぞれ荷物をそこらへんに投げ捨てて
道に群がる
限られた時間である
今しかチャンスがないのだ
次にその道が現れるのはいつかわからないからね
誰の顔にも不安がある
なぜなら足元は波にあらわれた丸くて大きな石が続くばかりで
平坦などないからだ。
石はあざ笑う様に動き、すべって体制を倒し足首をひねった女が絶望の顔をする。
少年はなきべそをかき、母親に戻ることを懇願する
その道はまだあるだろうか。自分はあちらまでいけるだろうか
誰の顔にも焦りがある
潮は引いているのだろうか。
まさか、もう満ちてきているのではないか?
右も左もただ海そのもので
教えてくれる者はいない
波に見え隠れする石に
そろりと足をのせ、ゆるゆると体重をかけ、石の機嫌をとりながら歩く
落とさないでくれよ お願いだからね
靴に水がはいったよ、どうすればいいのパパ
父親の顔は無表情である
子供はどうでもいい、親子なんて、何がどうなんだ
おまえは残れ、おれは行く、
go to heaven
そうだ、あそこは極楽だ
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