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人生初めての王様ゲーム
いつものように仲良し五人組で学校帰りに蒼空の家に立ち寄った。
蒼空の家は共働きで、両親ともに帰りが遅いということもあり、学校帰りに立ち寄れば、大体18時過ぎまでお邪魔させてもらっている。
ここにいる全員が中学の頃から仲が良いこともあり、慣れたようにそれぞれ漫画の続きを読んだり、スマホゲームをしたりして時間をやり過ごすことが多いのに、今日はある一人の発言で、そこにいた全員が一斉に顔を上げてリーダー的存在の碧生に注目する。
――王様ゲームしない?――
TVドラマやドキュメンタリー番組の世界で何となく単語を耳にしたことはあったけれど、実際にその言葉を身近で聞くことになるとは思ってもみなかった。
思わずゴクリと喉の奥を鳴らして唾を呑み込んでいた。
「王様ゲームって、碧生はしたことあるの?」
沈黙が続く中、グループ内では比較的おっとりしている新汰が碧生に問いかけると、軽く口角を上げた碧生が首を縦に振った。
一瞬みんなで顔を見合わせたあと、またすぐに視線を碧生へ戻すと、「これ、一枚ずつ取ってって」と碧生がポケットから四つ折りにした紙を四枚テーブルの上に散らばせた。
「まずは、ルール説明的なものもあるし、俺が王様やるから」
そう言った碧生に晴輝は、まだ誰もやるとは言ってないのに――と心の中で呟いてみる。
だけど断る奴もいる訳じゃなくて、ただ何となくそれぞれが様子を伺うように動く気配がない。
「じゃんけん……」
碧生から掛け声がかかれば、反射的に体が動くのは仕方のないことで、気がつくと「ぽん」という言葉と共に四人とも手を出していた。
「晴輝と洋史が勝ちね。一枚ずつ取って。残りを、新汰と蒼空が取って」
特に頷くこともなく、言われるままその通りに行動して、一人一枚四つ折りの紙を手の中に収めた。
「じゃあ、見えないように自分で番号を確かめて」
手の甲で隠しながら、紙の内側に書かれた番号を確認する――
「じゃあ、王様の言うことは絶対です。二番と三番が恋人繋ぎをする」
自分でちらりと見た番号は一番だった――ということは、晴輝は王様の命令からは外れたわけだけど――……
「二番は誰?」
碧生の問いかけに、ゆっくりと手を挙げたのは蒼空で、次の「三番は?」には、洋史が手を挙げた。
たまたま隣通しに座っていた二人は、挙げていた手を近づけると、そのまま指と指を絡めて恋人繋ぎをした。
「よし、まあこんな感じで王様になった奴が命令したことには逆らうことはできずに従うってゲーム……やるだろ?」
毎日の変わり映えしない日常からの好奇心か、首を横に振る奴はいなかった。
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