桜の花が散ったあと

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 四月。海浜公園の桜が見ごろを迎えていた。  薄ピンク色に染まる桜の木を見て、寂しくなる。  先生とは二ヶ月以上会ってない。連絡も取ってなかった。先生の事は忘れたかった。だけど、まだスマホの中に桜の前で撮った先生との写真が残ってる。  先生と並んで写る、笑顔の自分を見つめながら惨めな気持ちが沸き上がる。  子どもが産めない、賞味期限の切れた私は生きてる価値すらない気がした。  ――許容範囲。  不意に先生の声が浮かんだ。賞味期限切れのチーズケーキを食べてくれた事を思い出した。五日も過ぎてたのに、本当は甘い物が苦手なのに先生は食べてくれた。  先生はいつも優しかった。中学生の時も、今も。そんな先生が、恋人がいて、赤ちゃんがいる身で私に会うはずない。先生は誠実な人だ。  先生に会おう。  スマホを取り出して、先生に連絡すると女の人が電話に出た。
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