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「お洒落だね。先週と感じが違ったから、一瞬、誰かと思ったよ」
先生はそばに来て、そう声を掛けてくれた。
私の頭は先生の肩口ぐらいだった。
中学生の頃は先生の胸の下ぐらいしか背がなかったのを思い出した。私、成長したな。なんて、思ったりして、懐かしい気持ちになる。
「先週は中学生みたいな恰好でしたから、今日はちゃんとお洒落して来たんです。そういえば先生、先週はスーツでしたね」
「会合があってね。その帰りに海を見たくなって立ち寄ったんだよ」
「スーツで砂浜に座るって勇気ありますね」
気になっていた事を口にした。
先生が「海があまりにも綺麗だったから、ついね」と、苦笑を浮かべる。
「ところで栗原さん、この間、アパレルメーカーに勤めてるって言ってたけど、念願のデザイナーになったの?」
「デザイナーではなく、洋服を売る方の仕事をしてます。私、デザイナーになりたいなんて言ってましたっけ?」
「卒業アルバムに書いてあったよ。あれから君の事が懐かしくなって、アルバムを引っ張り出したんだ」
「私も見ました。先生、あまり変わってないですよね。体型とかそのままでうらやましいです」
「栗原さんだって小柄なまま変わってないよ」
「これでも少しは身長伸びましたよ」
先生と顔を見合わせて笑った。
先週よりも親しみを感じるやり取りだった。
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