桜の花が散ったあと

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「そうです。桜の美しさを賛美した詩だと聞きましたが、心がつめたくなるなんて、全然理解できなかったから覚えてるんです。普通は綺麗な物を見たら嬉しくなるじゃないですか。悲しいなんて絶対に変」 「そういう解釈もあるね。でも、美しさは永遠に続かないんだよ。作者はそういう事も考えて散る姿に涙がこぼれてしまったんじゃないかな」 「でも、散りながら葉っぱが出るんですよ。そしてまた春に咲くんです。終わりじゃないんです。花が散ったら終わりみたいで、桜に失礼です」  急に先生が大きな声で笑い出した。 「先生?」 「いやぁ、ごめん。そんな風に考えた事なかったから。桜に失礼っていいね」  さらに先生が可笑しそうに笑った。 「そんなに変な事言いました?」 「うん。面白い」 「楽しんでいただけて良かったです」  先生と顔を見合わせて笑った。 「ねえ先生、せっかくだから秋の桜と一緒に写真撮りましょう」  スマホを取り出して、桜が入るように先生と並んで写真を撮った。  その後も先生と昔話をしながら沢山笑った。先生といると楽しくて、自然と笑っていた。
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