桜の花が散ったあと

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 それから次の週も、その次の週も、またその次の週も先生に会った。気づけば週五日、先生に会っている。仕事終わりに稲毛駅で待ち合わせて、ご飯を食べに行ったり、千葉駅まで移動して映画を観たりもした。  映画の後、電車を待ちながら、先生に悲しかった事と嬉しかった事を訊ねた。先生は少し考えて、「悲しかった事は子どもを亡くした事で、嬉しかった事は希美ちゃんと再会した事」だと、初めて下の名前で呼んでくれた。 「希美ちゃんは?」と聞かれて、「悲しかった事は離婚」と嘘をつき、「嬉しかった事は先生と会った事」だと口にした。  先生は「嬉しかった事が同じだね」と言ってくれて、なんか両想いだねって言われたみたいで、胸がときめいた。  会う度に先生の存在は大きくなって、つまらなかった日常が心弾むものになった。先生といると幸せでいっぱいだった。ずっと先生の隣にいたい。先生と笑っていたい。そう思いながら、先生に会い続けた。
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