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十二月二十五日。
朝から台所を占領して困ると母に小言を言われながら、ケーキを焼いて、ローストチキンを作った。
料理を持って稲毛駅まで行くと、先生が待っててくれた。
学校帰りの先生はスーツ姿で、グレーのチェック柄のマフラーを巻いてた。先週、先生とショッピングセンターに行って、選んであげたやつだ。
「先生よくお似合いですよ」
マフラーを見ながら言うと先生が微笑んだ。
「これ巻いてると評判がいいよ」
「モテモテですか?」
「まあ、モテるね。音楽の先生と家庭科の先生にお茶に誘われたよ」
「若いんですか?」
「二十代ぐらいかな」
「あー、若い子に手を出しちゃダメですよ。ヤキモチ焼きますからね」
「妬いてくれるの?」
「妬きますよ」
「でも、男の先生だよ」
「え、男!」
目を見合わせて先生が盛大に笑った。
「もうー、先生、いじわる!」
「希美ちゃんは可愛いね」
先生は涙を浮かべながら笑っていた。からかわれたのはちょっと悔しいけど、軽い調子のやり取りが楽しい。
先生が紙袋を二つ持ってくれて、住宅街の方に向かって並んで歩いた。
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