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先生の家は七階建ての新しそうなマンションだった。
「三階に住んでるんだけど、本当は一階に住みたかったんだ」
エレベーターに乗りながら先生が言った。
「なんでです?」
「エレベーターが面倒だから。階段も疲れるし」
「先生って面倒臭がり屋なの?」
「高層マンションは住みたくないね」
「じゃあ、今度は一戸建てに住みますか」
「いいね」
「庭付き一戸建てにしてお花も植えましょうか」
「薔薇がいいね」
「薔薇は手入れが大変ですよ」
「でも手をかけた分、綺麗な花を咲かせてくれるから」
「面倒臭がり屋なのに薔薇は育てるんですか」
「好きな物には手を抜かないんだ」
「じゃあ、私にも手をかけたら綺麗な花を咲かせるかも」
「希美ちゃんはもう綺麗な花が咲いてるよ」
面と向かって言われて恥ずかしくなる。
「それって先生、私に手をかけてくれてるって事?」
ふふと笑うだけで先生はその先を教えてくれない。だけど、大事にされてる気がして、胸がいっぱいになった。
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