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一月末。
雨に混じって雪が降る寒い日、南船橋のららぽーとで先生を見かけた。
先生はベビーカーを引いて、三十代ぐらいの女の人と親し気に歩いていた。
直感的に先生の恋人だと思った。子どもはいないと聞いていたけど、何か事情があって言えなかったのかもしれない。
悪い想像が的中して、その夜は眠れなかった。胸がえぐれたみたいに痛い。
先生がベビーカーを引いてる所を見て、女として賞味期限が切れてる事を再認識した。
それから二日後、先生から電話がかかって来た。
先生はいつもと変わらない穏やかな声で連絡できなかった事を詫びて、会おうと言ってくれた。だけど……。
「もう先生には会いません」
誓いを立てるようにハッキリと告げた。
「希美ちゃん、どうしたの? 怒ってる?」
先生は心配そうに尋ねた。
「私、ずっと不妊症の治療をしてたんです」
初めて先生に前の結婚の事を話す。
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