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京葉線の稲毛海岸駅前の居酒屋に先生と入り、カウンター席に並んで座った。
「僕はもう五十才になるよ」
そう言って、先生は穏やかな表情で日本酒を注いでくれた。
先生のフサフサな前髪には少し白髪が混ざってるけど、四十代にも見える。面長の顔にはあの頃とは形の違う黒縁眼鏡をかけてて、鼻筋がすっきりしてるから眼鏡が似合って誠実そうな感じがする。
「栗原さんは三十八になるのか」
感慨深そうに先生が言った。
静かな声だけど、張りがあって聞きやすい。
「すっかりおばさんです」
「そんな事ないよ。可愛らしくて、まだ中学生に見える」
先生が笑った。
口元に薄く浮かんだシワが優しそうに見えた。
「中学生は言い過ぎですよ。まあ、童顔だから若くは見られますけど」
丸顔で、小柄だから未だに子どものように見えてしまう事がある。
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