第二話 邂逅

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 四海奇貨館のメンバーが全員集まり、大まかなスケジュールの組み立てから始まり、展示する文物のリスト、展示レイアウトの作成など誰が担当するか……と会議が開かれることになった。  幸い、今日は見学予定もなく時間は十分にあり、会議自体も緩やかなものであった。慣れているメンバーが談笑しながら役割分担をしていく中、初参加の晩霞はひとまず林主任の補佐役に……となったところで、天華が言った。 『あなたはこの時代の研究をしていたと聞きました。どうでしょう、展示する区画の一つを担当してみませんか? 僕が補佐に入りますので』  天華が言えば、周館長も林主任も『たしかに、ちょうどいい機会ですね』『いい勉強になるからやってみたら』と賛同した。陶も『大丈夫よぉ、オーナーがついていたら百人力だわ』と背中を押す。  まだ入社して十日足らずの新人にそんな大仕事、と晩霞は内心悲鳴を上げたが、頷くしかない。オーナー直々の指名だ。  顔を強張らせる晩霞を、天華はさっそく『企画室のレイアウトを確認しましょう』と二階の一画にある企画室まで連れ出して、小一時間ほど過ごすことになったのだった。  ランチ時は人懐こく接してきたものの、仕事が始まれば適度な距離間で先輩らしくきちんと指導する。四海奇貨館を任されているだけあって、知識も豊富で説明も分かりやすく、充実した時間を過ごせたことは間違いない。  楚天華は実にスマートな青年だ。これがいわゆる、恋愛漫画で人気のスパダリなのだろうと、晩霞は感心した。  もっとも、あれは漫画で見るから良いのであって、実際に側にいれば、ただただ緊張するだけだ。  さすがに『スパダリ×凡人主人公』と自分に置き換えて浮かれるほど楽天的ではない。相手が前世で自分を裏切った相手にそっくりとなればなおさらで、前世の因縁がまだ続いているのではと嫌な方向に考えてしまう。  変な緊張の続く午後を過ごして疲労が溜まった晩霞は、ふかふかクッションから離れるのを名残惜しみながら身を起こした。ここで迂闊にひと眠りしたら、朝まで寝てしまいそうだ。  手早く化粧を落として、軽くシャワーを浴びて、ちょっと高めのフェイスパックをして、少しでも気分をさっぱりさせる。ご飯を作る気がしなかったので、ストックしていた亀ゼリーに練乳をかけて食べた。好きなわけではないが、「健康にいいから!」と引っ越し時に母が箱入りで置いていったから、少しずつ消費しなくては。  ベッドに移動してからも、タブレットで配信ドラマを見る気も起きず、ただ横になる。すぐに眠気がやってきて、頭の芯と身体がずしりと重く感じた。  マットレスに深く沈む感覚に、まずいな、と思う。  ――こんな時は、決まって夢見が悪くなる。  そう分かっていても、眠気に抗うことができない。晩霞の意識は引きずり込まれるように、深く深く沈んでいった。
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