第二話 邂逅

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 *** 「……またか……」  アラームの音に起こされた晩霞は、ベッドの上で寝転がったまま小さく呻った。  悪夢ではないが、夢見がいいというわけでもない。  薄れていたはずの記憶がどんどん鮮明になっていくのが、怖かった。  一つ色が鮮やかになれば、絵具が滲んで広がるように、くすんでいた景色は色を持ち始める。登場する人間は声を持ち、熱を放ち、感情がこちらにまで伝わってきそうなほど、明確になっていく。  それだけならまだいい。  だが、穏やかな日々が永遠に続かないことを晩霞は知っている。  この後に必ず訪れるのは、屈辱と絶望と苦痛と死。そして千年も続く地獄のような転生だ。  それすらも鮮明になって己の夢として現れたとき、自分は耐えられるのだろうか。  少しずつ、だがじりじりと確実に近づいてくる前世の悪夢の気配に、晩霞は悩むようになっていた。  頻繁に見るようになった夢の原因は、おそらく天華だ。彼の顔を見る度に、小華のことが、前世の記憶がちらつく。それが刺激となって、過去の記憶を呼び起こしているのかもしれない。  顔を合わせないようにしたいが、そうもいかない。何しろ楚天華は晩霞の上司であり、職場である四海奇貨館にいるのだから。  もっとも、企画展が終われば、こんなに毎日会うことも無くなるだろう。あと三週間の辛抱だと、晩霞は自分に言い聞かせ、のろのろと朝の支度を始めた。  だが、晩霞の憂鬱をよそに、その日、天華は朝から四海奇貨館に顔を出さなかった。
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