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ひたすら繰り返される弱肉強食の世界。
慈悲も無く奪われる生命。
これは因果であろう。呪妃として生きていた時、呪術に使うためにどれだけ多くの虫や動物の生命を奪ってきたことか。
何千匹、何万匹もの蜈蚣や蜘蛛、蛇や蜥蜴、蝶に蜂、鶏も猫も犬も……。自分が殺した分だけ償えと言わんばかりに、彼らの生死を体感させられる。
もう転生しなくていいです。
地獄でいくらでも拷問を受けます。
ごめんなさい。ごめんなさい。私が悪かったです。
お願いします。もう許して下さい――。
と、懺悔したところで許されるはずもない。
繰り返される転生をただ受け入れるしかなく、ひたすらに耐えた。かつての呪妃としての高いプライドも人間の尊厳も心もバッキバキに折られまくって、跡形もなく踏みにじられた。
そうして再び人間として生を得た時には、千年以上の時が経っていた――。
「……」
自分が蟻となって人間に踏み潰された感覚まで思い返してしまって、晩霞はぶるりと身を震わせた。
急いで羽毛布団の中へと引き戻り、悪夢をリセットするため二度寝を試みようとしたものの、傍らのスマホが六時のアラームを鳴らし始める。
「……」
無慈悲な電子音に、晩霞は布団から渋々這い出た。
さすがに今日は寝過ごすわけにはいかない。難航した就職活動で、ようやく決まった職場へ初出社の日なのだ。
一度呻った後、気合を入れてベッドから降りる。「よし!」と両頬を軽く叩いた。
「夢は夢! 前世は前世! 今の朱晩霞には関係無い!」
そう、それよりも、今日からドキドキワクワクの社会人なのだ。一週間前に買ったばかりのオフィスカジュアルな服に着替えて、練習していたメイクをして、輝かしい社会人第一歩を踏み出そうじゃないか。
晩霞はさっそく顔を洗いにバスルームへと向かった。
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