カメラのセンス

3/3

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
 まさか、そんなはずはない。  ありえない。  たまたまだろう。  私はまた何十枚、何百枚と2匹の写真を撮影し続けた。  そしてまた、写真を確認してみる。 (らいむぎの渋顔写真がない…!)  常にきゃるんとした表情のらいむぎの写真。  増える渋顔のこむぎ。  愕然とした。  天を仰いだ。    深呼吸をして、自分を落ち着かせる。 「こむちゃん、君って渋顔になりがちやね…」  私のカメラセンスではなかった。  いやもちろんカメラセンスもあるだろう。だが、こむぎが元々渋顔だったのだ。  まだ一歳の女の子。  野良猫だったなら、数多の男の子から言い寄られていたであろう。  こむぎは渋顔ニャンコだった。  いや、いいのだ。  渋顔なんて関係ない。  こむぎは優しくて、私や夫にシャーと唸ったことも爪を立てて引っ掻いたこともない。手を差し出すと舐めてくれる。尻尾を踏んだ時も「にゃん」と言うだけで許してくれた。  そんな心優しいこむぎがどんな顔だって関係ない。  こむぎはかわいい。渋かわいい。  そう、それでいい。  それでいいのだ。  愛してるよ、こむぎ。 a1061a7c-89e1-4285-87b7-6cd8a6f3aeba ※しぶぅ。背景を黒くしたため渋さが増した。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加