ardor

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ardor

先を歩くアーロン閣下の後を、ただ黙ってついて歩くと たどり着いたのは閣下の私室だった。 執務室や書斎は何度も訪れているが、寝室のある私室には一度も足を踏み入れたことは無い。 部屋の中央には、深紅の薔薇のような色をしたベッドが鎮座していた。 「………」 これが、次期ハワード家当主の寝室。 まるで王族のような豪華さの寝所に、思わず言葉を失って立ち尽くしていると、後ろから勢い良く押し倒された。 「あっ……!!」 ベッドに組み敷かれ、愛おしい青の瞳が覗き込む。 鼻先が触れそうなまでの距離で見つめ合うと、互いの瞳に互いの顔が映りこんだ。 金の髪がさらさらと零れ落ち、僕の頬をくすぐる。 そのくすぐったささえも、心地よい。 ……叶うはずのなかった思いが、叶えられた。 「……んん……っ」 噛み付くような口づけが落とされる。 閣下の舌先が、僕の初心な口内を蹂躙していく。 「…んっ……ふ……ぅ……」 どんなに乱暴に絡められても、愛おしさしか湧き出ない。 組み敷かれた手首が強く握られ、そこからも思いが伝わってくる。 「……ん…ぁ…」 水音と共に唇が離れ、閣下に見下ろされる。 熱を帯びた唇が切ない。 失礼がなかっただろうか。不愉快にさせていないだろうか。隙あらば容易く流れてくる負の感情。閣下の心が毎瞬毎瞬知りたくて、伺うように見上げて視線を絡ませる。 「……不思議なものだな」 自嘲の笑みをこぼし、アーロン閣下はシャツを脱ぎ捨てた。 「何度女性を抱いても何も感じなかったが……お前と口づけただけで、狂いそうになる」 「っ、アーロン閣下…っ…!」 美しく鍛えられた身体が、僕の目前に晒される。 指先がそっと僕のシャツを暴き、絹擦れの音が柔らかく響いた。 「欲しくて……たまらぬ」 「アーロン閣……っ…!!あぁっ……!!」 閣下の手で暴かれた胸板に、唇が寄せられた。 何度も何度も、強く吸われ、紅い薔薇の花弁が散りばめられていく。 「あぁ……はぁっ、はぁっ……ぁ……」 薄桃色の先端が実を結んだように固くなり、閣下の熱い舌先がそっとその実を食む。 「ああぁっ!!ん、あぁっ……!!」 身体が勝手に反り返って、何度も何度も震える。 快楽の波紋が全身へ広がり、加速していく。 ……一人で慰めていたときの、比じゃない。 「アーロンさ……まぁ……っ!」 途切れ途切れに名を呼びながら、堪らなくなって柔らかな金の髪に触れた。 一瞬、閣下がぴくっと反応し、咄嗟に僕は手を引っ込める。 「……あ…申し訳ありま…せ……出すぎたマネ、を……」 「何を言う」 恐る恐る閣下と目を合わせる。 優しく柔らかな笑みを湛えた青い瞳とぶつかった。 「やっと……お前から触れてくれたな」 「えっ……!」 「お前が俺に望むように……俺もお前に望んでいるのだ…愛され触れられることを」 (そんな……信じられない……) 涙がこぼれそうな瞳で見上げながら、そっと閣下の頬に触れた。 その手を、閣下の手が重なって、包み込んでくださる。 「また泣きそうな顔をしているな……子供の頃に逆戻りか」 「も、申し訳ありません……しかしこれは嬉し涙で……」 「……良い。俺の腕の中でだけは存分に泣け」 「…っ……!!」 僕の指先は、愛する人からの口づけを受け取った。 再び唇が重なる。優しく、深く深く奥まで絡められている間に、閣下の手が僕のベルトへ伸びた。 これ以上ないほどまでに昂ぶった中心が露になる。 あふれ出す先走りの蜜はとどまるところを知らない。 「……随分、昂っているではないか……」 荒ぶった呼吸と一緒にベルトをはずす金属音が重なる。決して見ることはないと思っていた、閣下の中心が、僕の前に姿を現した。 熱く滾(たぎ)ったお互いの中心が触れ合う。 「……あぁっ……!!」 「………っく…!!」 閣下の中心からも透明な蜜があふれ出し、互いの蜜が絡み合った。 指先で触れられるのとは全く違う快楽が押し寄せてくる。 (ああ……アーロン閣下の……) もっと触れたい。 もっと、もっと…。 自然と僕の指先が、閣下のものに触れた。 「くっ……レイ……」 「アーロン閣下……」 大きく熱く燃えるようにそそり立つ閣下の中心が、ぴくっと震える。 「レイ……お前が、俺をこんな風にさせているのだ……」 「そ……そんな……」 青い瞳がこの上ないほどに燃え滾っているのが分かる。 「……もう、我慢できそうにない。今すぐお前が欲しい。だめか」 「だめなわけが……だめなわけ、ありません…っ」 「良い返事だ」 両脚が思いきり開かれ、後孔まで晒される。 薔薇の蕾のような後孔は、滴り落ちた先走りの蜜にまみれ、閣下の視線を浴びながら愛おしさと羞恥に震えているのが自分でもわかった。 あまりにしおらしいその蕾を見て、僅かにためらいをみせたアーロン閣下に、僕は見上げて微笑む。 「大丈夫です……痛く、ないですから…」 「レイ…?」 眉根を寄せる閣下に、恥じらいながら答える。 「何度もあなたを思って……ここも自分で……していたので…」 「……っ…」 「入れて……ください……お願いします……」 閣下の、目の色が変わる。 どくどくと脈打ち、いきり立った鈴口が、初めて蕾に触れた。 「あぁっ……そのまま…ぁ……んあぁっ!!」 すっかり柔らかくなった後孔は、まるで待ち望んでいたかのように閣下の中心を受け入れる。 「……キツい…な……っ…はぁ……っ」 閣下の言葉に余裕がなくなっていく。 貫かれている傍らで、僕の中心にも火がついて、何度も震える。 指先が深紅のシーツにしわを作り、しなやかな肢体が反り返った。 「あっ…ああぁっ……」 猛々しいその中心が、僕の中でゆっくりと動き始めると、叫び声に近い声が漏れてしまう。 「アーロン様ぁ……すご……い……あぁぁっ……」 快楽にゆがみ、涙がこぼれる。 そんなぐちゃぐちゃのまま、閣下と目が合う。雄の目をしたアーロン閣下の瞳に射貫かれ、また腹の奥が切なくなった。 「レイ、ああレイ……もう、俺だけのものでいろ……っ」 「あぁ……っ……あ、アーーーッ……!!」 卑猥な水音を立てながら抜き差しされる度に、僕の中心が震え、遂に欲を吐き出した。 大量の白濁が自分の体にまき散らされてもなお、アーロン閣下の律動は止まらない。 おおいかぶさり、互いの熱と汗が混ざり合う。 吐息が絡み合い、どちらともなく唇が重なり、舌先が触れ合う。 「……んぁっ…ふ……ぅ……ぁ…」 「レイ……好きだ、愛している」 「あ……」 囁かれた掠れ声に、僕の瞳から涙が溢れ出した。 すぐさま首筋に舌先が這って、何度も吸われる。 再び絶頂を迎えそうだ。そんな僕の最奥に、熱を失わない閣下の中心が何度も打ちつけられる。 「はっ……は……レイ、レイ……っ」 「あぁ……あーーっ!!」
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