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耳をそばだてると、着信音らしい音は私達の足下からのようだった。テーブルを覗き込むと、荷物を入れるための籠の中にスマホが落ちていた。
「忘れ物みたい」
拾い上げたスマホを太に示すと、私は鳴らしたままも迷惑だし、持ち主からの電話かもしれないと思い耳を添えた。
「もしもし?」
「もしもし? ああ良かった。スマホを置き忘れてしまって」
「今、カフェの籠の中で見つけましたよ」
「良かったー。ありがとうございます!」
とても若々しい女性の声は、安堵の色をみせた。
「ごめんなさい。今、お忙しいですか? 幽霊電話公園はご存知ですか?」
「お茶しているだけです。幽霊電話公園て、住宅街の古い電話ボックスが残ってる公園かな?」
「そうです、そこです。もし良かったら、公園まで持って来ていただけたら10分ほどで受け取れるんですけど……ダメ。ですか?」
私はチラリと太を見た。ちょうどケーキも食べ終わった所だった。待っていても退屈だし、ぶらりと歩くには良い距離だった。
「いいですよ。じゃあ公園の電話ボックスで」
「本当にありがとうございます」
相手の女性が何度もお礼を言いながら電話をきると、私は残りのケーキを口に入れて紅茶で流し込んだ。
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