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「ほんと都会って退屈」
「まだ帰って来たばっかじゃないっすか。俺はこれ食べたら、また行ってもいいっすよ」
目の前でジャンボパフェを食べている後輩の多田太は、鼻先にクリームをつけてニンマリと微笑んだ。その大きな体躯で、手に持ったジャンボパフェがミニチュアのようだ。
「少しは我慢しないと楽しみも半減するからねー」
私はカフェテラスから、オレンジに染まり始めた空を見つめて、旅先での快楽を回想していた。
「すみません。こちら試作品なんですが、よろしければ試食いかがですか?」
アルバイトの女子高生と思しき店員が、可愛らしいモンブランケーキを二つ運んできた。太はそれを躊躇なく両手で受け取り、ひとつを私の目の前に置いた。
「ありがとうございます。いただきます」
私がお礼をいうと店員は満面の笑みを残して去って行った。
「まだ食べるの?」
「瞳さんいらないなら俺食べるんで大丈夫っすよ」
「食べるわよ」
お皿に添えられた木のスプーンで、私の口の中はブランデーくさい栗の甘さで満たされた。
“ブー、ブー”
突然、振動音と音楽が鳴りだした。
「瞳さんのスマホじゃないっすか?」
「え? 私のじゃないわ」
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