第0惑星   始まりのとき

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第0惑星   始まりのとき

 第1回公演                   0  果てしなく広がる大宇宙……どこまでいっても終わりが見えない暗闇……人によっては恐怖の対象だろうか。あるいは何らかの神秘性を見出すのだろうか。だが、この俺にとっては無限の可能性を感じさせてくれる空間であった。  この大海に漕ぎ出すことさえ出来れば、俺にも未来が開ける、明るい展望を抱ける、そう信じた俺は生まれ育ったこのどこかくすんだ星を――大昔は青かったらしい、信じられないことだが――後にして、まずは軌道エレベーターに乗り込み、宇宙ステーションに潜り込んだ。首尾は上々。テンションはアゲアゲだ。  俺は広い宇宙ステーションの構内を迷いなくすいすいと進む。このステーションの地図は――関係者以外立入禁止の区域を含めて――しっかりと頭に入っている。シミュレーションは何度も何度も、脳内やコンピュータで繰り返してきた。完璧だ。  俺は予備の宇宙服を拝借し、それを身に着けると、ステーションのとある作業区域に出る。そこの区域は“無重力”が広がっていた。幾度も映像で目にし、話で聞いていたのだが、初めて体験するそれについてさすがに戸惑いはあった。だが、かえって浮かれた気分を落ち着かせてくれた。素早く宇宙遊泳のコツを掴むと、俺は目当ての倉庫区域に入った。  そこには大小様々なコンテナが所狭しと置かれている。再び重力のある空間に戻った俺は床をスタスタと歩き、あるコンテナの前にたどり着いた。このコンテナ群の中ではかなり小さい部類に入るコンテナだ。平均的な身長の人類の男性が一人入れるかどうかという大きさである。コンテナの側面に付いてあるパネルを操作し、あることを確認する。 「……0619、積み込み先は……『ディスカバー6』。よし、これだな……」  俺は一旦周囲を見回す。辺りには人が少なくはなかったが、皆自分の作業に追われて、誰も俺のことを気にも留めない。俺は再びパネルを操作し、コンテナを開いて、その中にサッと潜り込む。体を折り曲げて横たわり、中からスイッチを押して、コンテナを閉める。元の積荷もあるためにやや、いや、かなり窮屈だが、今の俺には気にならない。  しばらくすると、コンテナがガっと動き出す。運ばれているのだ、俺が“密航”を目論む、巨大宇宙船に。少しすると、またコンテナがガタっとなった。船への積み込み作業が終わったのであろう。俺は宇宙服の腕にあるボタンを押す。すると、服が体から離れ、一瞬の内に小さなカプセルに収まった。ボタン一つで幅広いサイズに適応出来る優れもののカプセル宇宙服だ。俺はカプセルを胸ポケットに入れ、ため息をひとつつく。 「ふう……ふふっ」  ため息の後、俺は笑みをこぼす。まさかここまで順調に事が運ぶとは。こんなことならもっと早く実行すれば良かった。なにも十数年もあの星で鬱屈とした生活を送ることはなかったのに……。おっと、こうしてはいられない。担当の者が来る前に、さっさとこのクソ狭いコンテナからおさらばしよう。俺はコンテナを開き、ゆっくりと半身を起こす。 「さてと……って⁉」  俺は固まった。見知らぬ女の子が三人、三方向から銃口を俺に向けていたからである。
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