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仕事斡旋所に求人を見に行く俺。
良さげな求人票を見つけ、窓口へ持っていく。
「これ、応募したいです」
「はい。ステータス開示をお願いします」
「えっと……」
「えっと?」
「ステータス、開示しないと駄目ですか?」
「はい。決まりですので」
こいつ、何を言ってるんだ? みたいな顔の受付のお姉さん。
「笑わないでくださいね」
「笑う? そんなに面白い職業スキルなんですか?」
「えっと……まあ、はい」
「笑いませんから、どうぞ」
「……分かりました」
ステータスを開示する。
どういう仕組みかは知らないが、相手のステータスを見たい人にステータスをオープンすると、自分のステータスが相手に見せれるのだ。
見せれるのはスキル名とレベルだけだけど。補足事項は本人しか見れないらしい。
「え? 無職?」
「はい」
「……君は職業スキルが無職なのに仕事斡旋所に来たのね」
「……はい」
「……」
窓口から出てくるお姉さん。
「え?」
ガシッ
「え? は?」
お姉さんに顔面をつかまれ引っ張られ、そのまま建物の外に放り出された。
無様に地面へ転ぶ俺。
「おととい来やがれ」
「え?」
俺に塩? をまくお姉さん。
「うわっ」
おい、この対応は酷すぎるだろ。いくら俺の職業スキルが無職だからって。しかも痛い……あれ? 痛くない?
そこで俺は目が覚めた。
自分の部屋のベッドで寝ていたようだ。
「そっか。職業スキルの儀式も夢だったんだな。うん」
流石に職業スキルが無職はあり得ないし。そんな職業なんて聞いたこともない。無職は職業じゃないからな。
ステータスをオープンした。
【職業スキル 無職
出やがったよ!
「ふざけるな! くそっ!」
職業スキルが無職って何だよ!
「お兄ちゃん?」
「ハート、大丈夫か?」
「ハート、落ち着いて」
家族が俺の部屋に入ってきた。
いや、落ち着けねえよ。
「大丈夫、じゃない」
「どこか痛いのか?」
「お医者さん呼ぶ?」
「痛くないし……いや、心が痛いかも」
「心臓が痛いのか?」
「大変! 早くお医者さまを」
「お兄ちゃん、死ぬの?」
「あ、いや、職業スキルがショックで」
「ん? スキルが残念で気絶したのか?」
「え? そうなの?」
「まさか〜」
「いや、そのまさか」
「そういえば、スキルは何だったんだ?」
「そうそう」
「気になる〜」
「……笑わないでくれよ」
「笑う? どうしてだ」
「変な子ね。どんなスキルでも笑わないわよ」
「おもしろスキルなの?」
「……ステータスオープン」
家族にステータスを開示した。
「は? 無職?」
「無職って、無職?」
「お兄ちゃんが無職?」
「……うん」
「レベル10,000の無職……」
「……完璧な無職ね」
「うわー、こいつ無職なの?」
「おい、こいつって」
妹よ、流石に兄に「こいつ」はないだろ。いくら無職でも。
ガシッ
「え?」
父親に顔面をつかまれ引っ張られる俺。
「え? はい?」
そのまま家の外へ放り出された。
「痛い!」
本当に痛い。これ、夢じゃない?
「二度と顔を見せるな」
「え? 父さん?」
「俺に無職の子供はいない」
「私も無職の子供なんていなかった。うん」
「え? 母さん」
「私はずっと一人っ子だったよ」
「おい、メアリ」
バタンと閉められる玄関。
「……」
いや、17歳から成人だし、普通の一般人は成人したら仕事を見つけて自己責任で生きていくのが普通だけども、この仕打ちは酷くないか?
一文無しで放り出されてどうしろと?
この世界は前世の日本みたいに甘くない。
基本的に「働かざる者食うべからず」なのだ。
成人前の孤児なら孤児院とか行政の助けとかもあるが、成人した無職スキルの俺はどうしたら?
……駄目もとで仕事斡旋所へ行ってみるか。
職業スキル不問で何かの日雇い仕事があるかもしれないし。
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