冬火

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「では、どうか、炎に!」と未明が即座に答えると神様は微笑みます。すると、懐でパチパチと音がしました。未明の日記が燃え始め、火が全身を包んだのです。不思議なことに焼ける痛みはなく、心は穏やかなぬくもりに満ちていました。 気づけば、未明は炎となり、神様は御姿を隠されていました。辺りの雪は熱で溶け、隣の少女は日向ぼっこをするように楽しげに眠っています。微笑むこともできませんが、未明はこの上もなく幸せでした。 それから、日が山に半分ほど食べられると、神様の言うとおり吹雪は止み、遠くから少女の名を呼ぶ母の声が聞こえました。未明は少女が瞼を明けたのを見届けて、力尽き静かに消えていきました。 村の人はなぜ、こんな小さな子が生きて帰ってこれたのを驚き、神様に深く感謝しました。 それから、未明がどうなったかですって?安心してください。天に登った未明は神様のお使いになって、忙しくしています。それで、時々お暇を頂くと、この世界を眺め、次は何になろうかと話し合い、懲りずにまた、悩ましげなお顔で腕組みしているのです。
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