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ドアを開けると、真っ赤なダウンを着た凌雅が立っていた。
「び、びっくりしたぁっ! サンタかと思ったじゃん」
沙紀は瞬きを繰り返す。
「ただいま」
散歩からでも帰ってきたような口調で凌雅が言った。
三年ぶりの凌雅の声に、胸が詰まって言葉が出ない。
「何か言えよ」
凌雅が苦笑いしている。
会いたかった、と言ってもいいのだろうか。
一日たりとも凌雅のことを考えない日などなくて、寂しくて不安だった、と。
「イヴにそんな格好で家にいるってことは、そういうこと?」
スウェット姿の沙紀を見て、凌雅が言った。
自分をひとり置いていったくせに……。
「突然やって来て、失礼なこと言わないでよ」
ささやかな抵抗をしてみると、途端に凌雅の表情が曇った。
「いるの? ……彼氏」
「いるわけないじゃん」
沙紀は即答した。
「ただいま」
安堵の表情を浮かべ、溜め息を吐くような頼りない声でもう一度そう言ったかと思った時には、沙紀は凌雅の腕の中にいた。
「凌ちゃん……おかえり」
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