47.昼営業

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47.昼営業

 宿に帰ると、俺と大翔は市場での売り上げをしまい、帳簿をつけた。  朝食は残っていたパン耳で作ったフレンチトーストを慌ててかきこんだ。  その後、いそいで昼食営業の準備をしていると、お客さんが外に並び始める。 「健、今日も頑張ろうね」 「ああ」 「さあ、店を開けるぞ」 「うん。いらっしゃいませ!」  俺たちは昼の営業を始めた。  俺が注文を取り、大翔が調理をする。出来上がった食事を配膳しながら、また注文を取る。  毎日同じことの繰り返しとも言えるが、一人ひとり接客をするのは気が抜けない。 「チャーハン二つ、煮込み肉のどんぶり三つ」 「はい」  俺は大翔に注文を伝える。 「大翔、大丈夫か?」 「うん、問題ないよ。はい、さっきの野菜炒めが出来たよ」 「ありがとう」  俺は料理を受け取りテーブルに届ける。 「ごちそうさん」 「ありがとうございました」  代金を受け取り、テーブルを拭く。 「次のお客様、どうぞお入りください」  昼の時間は仕事をこなしているうちにあっという間に過ぎてしまう。 「次のお客様……ん? 」  俺は外を見た。もうお客さんは並んでいない。  店内のお客さんが食事を終え、店を出て行くと俺は大翔に声をかけた。 「もうお客さんが途切れたぞ。休憩にしよう。お疲れ様、大翔」 「お疲れ様、健。お昼は煮込み肉のどんぶりで良い?」 「ああ、俺、それ好きだから嬉しいな」 「良かった。そう思って二人分ちょっと残しておいたんだよ」  俺はテーブルを拭き、お茶を三ついれて置いた。 「アイラ、食事だぞ」 「はーい」  店の隅で店内の様子を見ていたアイラが席に着いた。 「はい、アイラちゃん、健、煮込み肉のどんぶりだよ」  俺は健がトレーにのせて持ってきた二人分のどんぶりをそれぞれの席に置き、半人分の小さなどんぶりをアイラの前に置いた。 「いただきます」  肉がほろほろと口の中で崩れる。味が染みていてご飯とよく合う。美味い。 「アイラ、このうちの子になってよかった」  アイラはにこにこと微笑みながら米を頬につけてどんぶりを食べている。 「今日もお客さん、喜んでくれたね、健」 「そうだな」 「あ、そうだ。アイラちゃん、明日の早朝から、新しい人が来るから驚かないでね」 「新しい人? 怖くない?」  アイラは首をかしげている。 「うん。怖くないよ」  大翔が笑顔で答える。 「何しに来るの? 何の人?」 「うーんと……お店の見習いさん、かな?」  大翔が俺を見る。俺は静かに頷いた。 「ふーん」  アイラは特に興味のなさそうな声を出した。 「見習いって……色々教えるつもりか? 大翔?」  俺が大翔に確認すると、大翔は首を縦に振った。 「うん。ポールとステラも自分たちでお弁当作りができるようになれば、僕たちがいなくても自分たちで商売できるようになるでしょ?」 「まあ、そうだな」 「明日が楽しみだね、健」 「その前に夕方の営業があるだろう」 「だね」  俺たちは遅い昼食を終えると、夕方の営業のための準備を始めた。
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