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「どっかいけ。視界から失せろ」
父親の手が、私に振り下ろされる。
「ほんっとうに愚図ね。死んだら?」
母親の足が、私を蹴る。
「邪魔。どけ」
姉の言葉が――あの人達が、私を傷つける。
学校で精一杯明るいキャラを演じて、疲れて帰ると家族からの差別が待っている。
出来損ないの、私を詰る人たち。
いつもどおりの、見慣れた光景。
母親と父親が姉に言う。
「あなたはできる子だから。“あれ”とは違って」
――暴力を受けているのは私。暴言を吐かれているのも私。
だけど、私は私を捨てて自分の身を守っている。
いつしか何も感じない人形になっていて、それを心地よくさえ感じていた。
いつまでも終わらないなら、それでもいい。それでもいいから、痛みを消して。
そう願って、いた。
それなのに。
劣等感と絶望と悲しみと・・・。ぐちゃぐちゃの私を、あなただけが癒やしてくれる。
本当に、大好きで大好きで仕方ないの。
でも、好きだからってだけで束縛をしてはだめって学んだから。
もう、同じ失敗はしない。
いつもどおりの、いつ終わるともしれないこの日常が崩壊するのには、私が浜崎を好きになってから2ヶ月もかからなかった。
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