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アニメオタクだからといってキモいと思われたりはせず、彼は昔から女性にモテていたらしい。実際、私と知り合ってからも、それらしき噂がいくつもあった。
「それにしても……」
ようやく落ち着いて座り込んだ私は、改めて友人Kの部屋を見回す。
「……こんなに同じ人形ばかり、よくもまあ、集めたものだな」
「フィギュアだって言ったろ」
と私の言い方を訂正してから、友人Kは私の認識間違いも指摘する。
「そもそも『同じ』じゃないぞ。お前、咲子ちゃんとまいまいとみっちーとカオリンの区別もつかないのか? お前の目はガラス玉か?」
目玉がガラスの模造品なのは、それこそ人形の方ではないか。
そう言い返そうと思ったが、よく見れば、彼のフィギュアたちの目はガラス製ですらなかった。肌色の素材の上に、カラフルで複雑な瞳が描かれているだけだった。
「すまん、私には同じに見えてしまって……」
「おいおい、よく見ろよ。ほら、例えば咲子ちゃんは……」
ボーイッシュな髪型がステキだとか、長髪が魅力的だとか。貧乳だからこそスレンダー美人で良いとか、ふくよかな巨乳キャラのムチムチ感が良いとか。
友人Kは、それぞれの特徴を語っていく。なるほど、そうやって解説されれば、私にも『同じ』でないことが少しずつわかってくる。
並べられたフィギュアを愛おしそうに眺めながら、熱っぽく語っていく友人K。そのうち彼は、うっとりとした表情になり、呟くのだった。
「尊い……」
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