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「お前は勘違いしている。故意に保険証を用意しろと急かし年寄りが慌てるのを見て笑っている。救急隊員と言う立場を利用して人の命を金に換えている」
「お前は何者だ」
瀬川の額に指を当て寿命を止めた。寿命を読み込む。残り26年と4ヶ月16時間54秒。掌を頭に被せる。指の股が裂けるほどに広げると指が脳に沈んで行く。最後の日に小指を絡めて逆戻りさせる。残り48時間ジャストに合わせた。寿命を回転させた。
「お前は何者だ」
3秒戻り過ぎた。
「お前は48時間後にはどこにいる?」
「仕事だよ、搬送中だろう。お前みたいに暇じゃない」
金原もお前呼ばわりをされて腹が立った。
「お前は救急隊員を失格だ」
「ふざけるな、俺がどれだけの命を救ったと思う。中にはもう駄目なじじいばばあがいる。多少技術のない病院に回してやらないと病院が足りなくなる。そこまで俺は考えているんだ」
「それはお前の任じゃない。神の領域だ。不良人間め、しっかりと反省させてやる」
金原は病院を後にした。富一弥生夫妻の元に行くと癪が羽を休めていた。
「癪、ありがとう。少し待っていてくれ」
金原は二人を横に並べ二人の額に掌を当てた。
「さあ、どこがいいか」
二人が転生する先を考えている。
「よし」
庭に咲く向日葵を見て決めた。金原の指が脳に沈んで行く。指から腕、肩、脳へと光の筋が登っていく。二人の筋が金原の脳で重なった。向日葵になって咲いては枯れるを永遠に繰り返す。未来永劫離れることはない。金原の脳で重なった二人の魂をボール状の塊にした。
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