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玲奈はいじめっ子たちを見て歯を食いしばる、どうせ、喧嘩になれば居場所を失ってしまう。そもそも義足で喧嘩は不利だ。しかも相手は大人数。勝てる気がしない。無理だ。
「そっちこそ高校生になってオムツしてるんでしょー!? おねしょもしてたりして」
その言葉に玲奈は真っ赤になる。事実だったからだ。
「してねぇよ! これは、義足に慣れるまでの保険だっての」
事故に遭ったのはもう半年も前、ではあるけれど。それでも何度か間に合わなかったことがあったから、怖くてオムツが外せないのだ。
「あはは。お漏らししない自信ないんだー。赤ちゃんみたい」
「オムツを開けて濡れてないか見ていいー?」
「やめ、ろ」
どこまで本気かわからない表情でいじめっ子は玲奈に躙り寄る。そこにスラ
リと背の高い上級生らしき男子生徒が通りすがっていった。
真央と呼ばれた男の子の髪の毛は少し赤く、異国の香りがした。何だかどこかで見た気がするな、と玲奈は思う。モデルかなんかだろうか。この容姿なら十分ある。背が高いだけじゃなく、細身だし。
「ねぇ、真央先輩だよ。やめとこ」
いじめっ子が困惑した顔で囁き合う。顔色は青白い。
「そうだね。真央先輩に嫌われたくないしね」
「行こ行こ」
ああ。何とか助かった、と玲奈はため息をつく。その場にしゃがみ込みたいけれど、立ち上がれないので堪える。
「解散―」
そういっていじめっ子が消えると、何故だか真央も消えていった。なので玲奈は首をかしげながら真央を一瞬見て教室に戻っていった、
高い鼻に、長くて濃い赤茶色のまつげ。やっぱり、見覚えがある、誰だろう。いや、本人なのだろうか。何だかソワソワする気持ちを抑えながら、玲奈は授業を受けた。
あんなイケメン、知り合いならいいのだけれど。そう思うと玲奈の頬が染まっていくのが玲奈本人にもわかる。何だかんだで男への免疫が無い玲奈は口元をつい緩ませるのをやめられなかった。
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