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「追試おつかれさまー!」 「おつかれー」  僕たちは紙コップをぶつけて乾杯した。炭酸が喉を刺激し思わず「ぷはー」と声が出る。彼女も同じように「ぷはー」と言った。  駅前にあるファーストフード店の小さなテーブルに僕たちは向かい合って座っている。対面というのも悪くない。 「いやあなんとか終わったねえ。最後先生ちょっと泣いてなかった? 寂しかったのかな」 「僕が問題解いたからだろ」  どうせ今日が最後なのだからと問題用紙を全部埋めて提出すると先生は「教師やってきてよかった……っ」と目に涙を浮かべていた。不良生徒の更生でも成し遂げたかのようだった。 「てか小坂くんよくあれ全部解けたよね。もしかして天才?」 「まああれだけ追試すればな」 「私には喋ってた記憶しかないけど」  疑わし気にこちらを睨む葉原さんから目を逸らして、僕はハンバーガーの包み紙を開く。葉原さんもストローを咥える。僕が一口齧ると、彼女は一口啜った。 「でも結構楽しかったなあ。なんか取り返せた気分」 「取り返す?」 「私たち最初隣の席だったでしょ。でもあんまり話せなかったじゃん。逆隣の友達とばっかり喋っちゃって」 「ああ、僕もそうだった」 「だよね。でもこの追試であのとき捨てた選択肢を取り返せた気がしてさ」  そして彼女は一言だけ呟いた。  それは本当に小さな声で、僕に届かせるつもりではなかったのかもしれない。   「……もしかすると、こっちが正解だったのかも」  けれど聞こえてしまった僕にそれを無視することはできなかった。
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