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「前にボールペンも回したことあるけど、小坂くんのシャーペンのほうが難しいかも。慣れの問題かな」
「バレー部がバスケットボールで試合するようなもんか」
「毎日の積み重ねって大事だねえ」
葉原さんはにこりと笑った。またあの笑顔だ。
僕の目を惹きつけて離さない、星の散るような笑み。
「おーい終わったかー」
がらりと扉が開いて先生が入ってきた。僕たちはさっと問題を解く姿勢に戻る。
「私、とても勉強になりました」
「白紙だが」
「明日もご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
「当たり前だろ。お前ら絶対明日も来い」
そのまま追い出されるように僕たちは教室を出た。
窓の外はすっかり暗くなっている。追試に集中させるためか、教室のカーテンが閉め切られていたせいで気付かなかった。
「ふう、無事終わったね」
「無事かなあれ」
「細かいことは気にしない。これも人生よ」
人生。彼女の口からその言葉を聞くのは二度目だ。
「小坂くん」と葉原さんは僕の名前を呼ぶ。
「また明日、ね」
ひらりと手を振って廊下を歩いていく葉原さんを見送りながら、僕は何度固めたかわからない決意を再び胸に抱いた。
僕は、彼女に告白する。
二週間後に訪れる『告白解禁日』に。
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