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日本人は『限定』に弱い。
学術的な証明が為されているのかは知らないが、それは僕にも実際の感覚として理解できた。期間限定と書かれているお菓子には目が向くし、本日限りのクーポンが配布されれば思わず必要ないものを買ってしまうこともある。
その感覚を少子化問題の解決に利用しようと国が定めたのが『期間限定告白制度』だ。
好きな人に告白できる日を限定することで国民の恋愛の促進を図り、昨今増加している絶食系男女の撲滅および少子化の解消を目指す。というものらしい。
国民は自由に告白することは禁じられ、違反者には軽度ではあるが罰則も課される。
いや何考えてんだ日本。
とは思っていたが、どうやらその効果は上々らしかった。それほどに『限定』とは日本人の根源的欲求なのだろう。
だからこそあの六月の終わり、僕は勇気を振り絞ることができたのかもしれない。
「ペン回しうまいね」
入学以来ずっと隣の席だった葉原さんに僕は初めて話しかけた。
もちろん顔も名前も知ってはいたけれど、お互い逆隣の友達と話すばかりでなかなか話す機会がなかったのだ。
しかし今日、僕はその均衡を破った。
なぜなら今日の放課後には席替えが行われるからだ。彼女とは明日から離れてしまうかもしれない。
今日で最後。そんな焦燥感に突き動かされた。
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