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告白は告白解禁日にしかできない。だからまず政府は告白解禁日の周知を徹底した。その結果、ほぼすべての国民がその日付を把握している。
──つまり、そんな日に人気のない場所へ誘った時点で告白されるとバレてしまうのだ。
それはもはや告白しているのと同じじゃないか。
「追試っていうのは終わらなきゃ終わらないほど良いからね」
「小坂くん自分が何言ってるかわかってる?」
怪訝そうな顔をする葉原さん。そんな表情すらかわいいと思ってしまう僕は相当重症なのだろう。
絶対にこの告白を成功させたい。
けど下手すれば告白前に振られる可能性だってある。じゃあどうすればいいか。
僕は考えた。それなら僕が誘わなければいい、と。
告白解禁日当日に半強制的に二人きりになる状況を作り出せばいいのだ。
そして僕は、葉原さんがうちのクラスでも群を抜いて数学が苦手なことを知っていた。
「わかってるよ。これは僕の選択だから」
彼女が数学よりもペン回しを選んだように、僕は成績よりも追試を選んだ。
もう一度、彼女の隣に座るために。
「あはは、小坂くんの人生は面白そうだね」
「葉原さんも負けてないと思うけど」
「そりゃあ光栄ですな」
くるりと、彼女は自分の生き様を見せつけるかのように一度だけペンを回した。
それから少しして先生が教室に戻ってきた。
先生が相も変わらず真っ白な解答用紙を見ながら「一体、どんな問題なら解けるんだ……?」と自らの教師人生に問うている隙に僕たちは教室を出る。
「じゃあ小坂くん」
「また明日、だな」
台詞を先取りされた葉原さんは一瞬驚いた顔をしてから、楽しそうに笑う。
それからひらりと「うん、また明日」と右手を持ち上げた。
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