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4. 映画
翌日は学園祭の振替で休みだった。シエルは朝練があると言って、早くに学校に行った。
オーシャンが映画を観に行こうというので、私たちは昼前に外に出た。家のすぐ前のバス停から、映画館までは15分ほどだった。
2人でバスに揺られていると、窓際の席に座ったオーシャンが口を開いた。
「シエルがよくホラー映画のDVDを借りてくるんだけど、センスが最悪なんだ。俺は全然面白いと思えないんだけど、あいつはそんな俺の感性がどうかしてるって言う」
「なんだかんだ言って、仲良いわよねあなたたち」
「まあな。姉の俺が言うのもなんだけど、妹は良い奴だよ。いつも俺のことを思ってくれる。少しは自分のことも考えりゃいいのにな」
「そうやってお互いを思いやれる姉妹って憧れるわ。私もロマンと、普通の姉妹になりたかった」
「普通って、なんだろうな」
窓の外を見ながら、ぽつりとオーシャンがつぶやく。
「さあ……。だけど、私たち2人があなたたちのようだったら、こんなに心がごちゃごちゃすることもなかっただろうなって思うの」
「それはそれで辛いよな。すぐそばにいるのに、ずっと叶わない思いを抱えなきゃいけないってのも」
「ええ……。でも、これに慣れてしまっていたの。この感情にも、姉を困らせることにも慣れすぎた。流石にこのままじゃまずいなとは思ってたの、ずっと」
簡単に他の相手を好きになることができたら、どれほど楽だろう。
「俺が代わりになれたらいいのにな」
オーシャンの声が、耳に虚しく響いた。
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