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1時間後、オーシャンの妹のシエルが帰ってきた。紺色のブレザーの下に、水色と白の爽やかなタータンチェックのスカートを履き、楽器の入った細長い黒いケースを右手に抱えている。元々のオーシャンの地毛と同じ明るいベージュの長い髪で、少し日に焼けたオークルの肌の姉と違い透き通るような白い肌、優しげなブラウングレーの目をした彼女は、私の姿を見てにこりと柔和な笑顔を浮かべた。
「あなたがエイヴェリー? オーシャンからよく聞いてるわ」
糸の様に細められる、シエルの目。とても優しい笑顔をしていると思った。オーシャンから聞かされてはいたが、シエルはオーシャンと全くタイプが違う。同じ双子でも、こんなに雰囲気が違うものなのか。
「そうよ、今日は急遽泊めてもらうことになったの。よろしくね」
ソファから立ち上がり、シエルの方に近づいて行って握手を交わす。彼女は泊まるという言葉を聞いても迷惑がるそぶりも見せず、シフォンケーキのように柔らかな笑顔で愛想よく微笑むばかりだった。
「こちらこそよろしく。お客さんが来て、ママもきっと喜ぶと思うわ」
シエルはそう言って、軽い足取りで自室に向かった。
「双子なのに、全然タイプ似てないわね」
「だろ? よく言われるんだ」
「あなたはボーイッシュだけど、彼女はすごくフェミニンね」
「見た目はな」
オーシャンは意味深な笑みを浮かべた。
間も無く制服から私服に着替えたシエルがリビングに戻ってきて、自分の部屋に遊びに来ないかと私に声をかけた。私は頷いて、彼女の後に続いて二階の部屋に上がった。
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