正一少年

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「ッ…ケホッ…」 余りに慌てて食べる為、むせてしまった少年。 喉を潤せる様にと、冷やし飴の入った水筒を差し出した。 「慌てなくて良い。ホラ」 それも又、少年は引ったくる様に受け取る。 余程、美味しかったのか目を輝かせる様子が、如何にも可愛らしく思え… つい手を伸ばし、頭を撫でてしまった。 が、少年は嫌がる事も恐れる事もしない。 (良かった。だったら、話しを進めようか) 「それは、“冷やし飴”って言うんだ。 持って帰りなさい。 それから、これもだ」 サンタクロースは水筒に引き続き、カンパンの入った紙袋を少年に渡した。 食べ物を手に入れた事で、こちらに興味が湧いたようであった。 そんな少年へサンタクロースは笑顔でビラを渡した。 「そこで、君に相談だ」 渡されたビラへ目を落とし、少年は驚きの声を上げる。 「えぇっ!ひゃ…むぐっ」 内容を口外されては困る為、少年の口を塞ぐ。 「こら、町中で大声で喋って良い事じゃない。 静かに読め」 「う、うん…」 少年は黙ってビラを読み、目を輝かせた。 「おじさん!俺っ」 顔を上げた少年に確認の言葉を掛けた。 「受けてくれるか?」 「うん!」 「ついておいで」 何処かへ向かうサンタクロースの後を、少年は嬉々としてついて行った。
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