正一少年

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少年を人気の無い所まで連れて行き… 空間へ向かって右手を上げる。 そうするだけで、二人の眼前が蜃気楼の様に揺らいで… 「えぇ?」 少年は驚きの声を上げるも、逃げようとはせず… サンタクロースに続き、その空間へ入って行った。 そこは…何も無い、白い空間であった… 「ここでなら、安心して込み入った話が出来る」 そう言うなり、サンタクロースは本来の姿になった。 「トナカイを必要としているのは、私の相棒が居なくなったからなのだよ。 では、契約の説明をしようか」 …サンタクロースは、“契約”の内容を書いた紙を少年に渡し説明した。 その内容とは… ①契約金は百万円。 ②契約金は直ぐさま支払う。 ③代償として70年間、人間の時の記憶を失う。 ④70年後、元の姿に戻る。 「君は何歳だ?」 「15歳」 「…70年後…君を知る者は誰も居ないかも知れない。 その状況下で15歳の姿の君が、ここへ戻る事になるのだ。 それでも…この条件を呑めるかい?」 「うん!良いよ!」 少年は笑顔で元気の良い返事をした。 (…目の前の“百万円”で、何も見えていないのでは?) サンタクロースは心配になり、もう少し話しをする事にした。 「君の名前は?」 「正一」 「では、正一君。 君に家族は居るかい?」 「居るよ。10歳の弟と8歳の妹。 父ちゃんと母ちゃんは、空襲で死んじゃったけど…」 「そうか…それは、お気の毒に… それで、君が小さな弟妹の為に頑張っているんだね」
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