正一少年

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手紙を読んだ弟は大泣きし、その声に妹は目を覚ました。 「にいちゃん、どうしたの?」 寝惚け眼を向け、呼び掛けて来る妹。 (兄ちゃんは、俺達を食わせる為に… どっかでお金を… そのせいで、一緒に居られなくなっちゃったんだ) 涙は止まらないまま、弟は妹を抱き締め… 兄の話しをした。 「ふぇぇ…にい、ちゃぁ…」 「梅子、良い子にしていよう? ちい兄ちゃんと、頑張ろう? そうして、おお兄ちゃんを待ってようね」 泣きじゃくる妹を腕に抱え、弟は心に誓った。 (俺、梅子をちゃんと、育ててみせるよ。 頑張って生きて、70年経って兄ちゃんと会った時に… 威張って話せる様になりたい。 『俺、頑張ったよ』って…) …玄関の直ぐ外の、白い空間の中で… 正一はサンタクロースと共に、弟妹達の様子を見守っていた。 頬には涙が幾度も伝わり、濡れていた… やがて…右袖で力強く目元を拭い、笑顔をサンタクロースへ向ける。 「ありがとう!おじさん。 行こう!」 未だ涙が残る瞳に、明るい笑顔。 「ああ、矢張、君の笑顔は人を和ませる。 私の目に、間違いは無かった。 これから、宜しく頼むよ。相棒」 サンタクロースは正一の肩に右手を置く。 と…その姿は忽ち、トナカイへと変わった。 その後ろにはソリが… 「…お前は日本生まれだから… 名を“金太郎”としよう。 行こうか、子供達の笑顔を護る為に」 「ハイ!サンタさん」 サンタクロースはソリに乗り、高らかに声を上げた。 「ホッホッホ~!」 その声を合図に金太郎は走り出し、ソリは空高く舞い上がった。 …シャンシャンと、高らかに鈴の音が響き渡る… こうして…サンタクロースと相棒の金太郎の物語が始まった…
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