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「金太郎…いや…正一。
“今までありがとう”」
そう、サンタクロースが口にすると…
金太郎の姿がトナカイから、人間の少年の姿へ変化した。
「…え?おい、ら…」
「“正一”もう、良いんだよ」
「え?あぁっ!?」
サンタクロース言葉に、正一は自身の両掌を目に入れ…
驚きの声を上げた。
「も、戻ってる!?」
「契約は終了だ」
サンタクロースはソリの席から、大きなリュックを持ってきて正一に渡した。
「君は今より、甥と姪が経営する施設に勤めるんだよ」
「…再就職先、って事?」
「そうだ。“事故で両親を亡くした遠縁の子”として、行くんだ。
そこは住み込みで働けるから、良いぞ」
「へぇ~凄いな~」
口調は軽いが、正一の涙は止まらない。
(なんか、言いたい…なのに、言葉が出ないよ…)
…トナカイの頃の記憶が未だ鮮明に残っており、様々な情景が脳裏に…
「良く、頑張ってくれたね。
君は本当に、“優しい良い子だった”」
そう口にするなり、サンタクロースは正一を抱き締める。
腕の中で正一は眠る様に目を閉じ、動かなくなった…
「ありがとう。元気で」
サンタクロースは正一の背を軽く叩いた後、身を離し…
両手を目を閉じたままの正一の両腕に添え、身体を反転させた。
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