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「行きなさい。
生きなさい。
新たなる、生を。
未来へ向かって」
静かに語りかけ、右手で優しく背を押す。
すると…正一は目を開け、ハッとした表情になった。
「あれ?おいら、居眠りしちまったんか?
おいおい…こんな野っ原で寝ちまったら、風邪ひく以前に凍死ぢゃん…
大概、“すっとぼけ”だって…ええと…
父ちゃん?から、言われてんのに」
ブツブツと独り言を呟きつつ、背に負ったリュックを下へ下ろした。
中を開け、手を突っ込み…
位牌を二つ、両手に取って上に掲げた。
「ね、父ちゃん、母ちゃん、見えるかい?
ここが、これからおいらが生きてゆく“東町”って所だよ。
おいちゃん、おばちゃんと仲良くやってくからさ!
心配しないで、見守っててよ」
そうして…リュックに位牌を仕舞い込み…
正一は勢い良く、町へ向かって駆け出した。
振り返らず、真っ直ぐに…
…サンタクロースは白い空間で、かつて相棒であった少年を見送る…
「どうか、幸せに…
私の相棒に、祝福を…」
慈愛の籠もる瞳と微笑み。
それら全てを向け、祈りを捧げた後…
サンタクロースは故郷へ帰っていった…
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