物語の始まり

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かつて日本は… 多くの戦争と、大敗した経験を持っている… 1945年8月15日(昭和20年8月15日)終戦。 戦後…子供であっても、その日の食べ物に事欠く時代であった… 闇市の中を、一人の少年が彷徨っていた。 「ひもじい…」 カゴに積まれたリンゴに目が行き、ゴクリと喉を鳴らす。 そんな少年に店主は冷たく言い放った。 「坊主、金は?」 「…ない…」 「じゃあ、コレはやれねぇな。 とっとと、帰れ」 (何とか食べ物を手に入れたい… 俺が、何とかしないと… 俺が、アイツらを食わせてやらないと…) …両親を亡くし、幼い弟妹を抱えた15歳の少年は… 懸命に知恵を絞っていた。 (ああ…頭がクラクラする…) 空腹の余り目眩を覚えた少年は、その場に座り込んでしまった。 「ホラ、食べなさい」 不意に頭の上から、大人の男の声が振ってくる。 次に、目の前に現れた大きな掌と、そこに乗せられた三枚のカンパン。 「っ!?」 物も言わず全てを手に取り、一枚を口に押し込んだ。 「ッ…ケホッ…」 「慌てなくて良い。ホラ」 声と共に目の前に水筒が。 引ったくる様に受け取り、中の液体を喉に流し込んだ。 (あ…甘い!) 目を輝かせる少年に、声の主は豪快に笑い頭を撫でた。 「それは、“冷やし飴”って言うんだ。 持って帰りなさい。 それから、これもだ」
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