18人が本棚に入れています
本棚に追加
学生で居る間はタイムカードを押すだけで、“日勤で出勤”した事にしてくれ、学費は半額補助。
又、現場スタッフが不足し困らない様にと、常に人員補充され…
余りに好待遇である事に、正一は親類の経営(金銭面)が心配となり…
事務長に質問した。
そんな彼を事務長は理事長室へと連れて行った。
「し、失礼します…」
「おや、正一どうした?」
「“鬼軍曹”のシゴキが辛くて、避難してきたの?」
明らかに仕事中に抜け出して来た筈を、“叔父さん”と“叔母さん”(本当は甥と姪)は、笑顔で迎えてくれた。
事務長(甥の息子)は正一の質問を、二人の理事長へと話す。
「ああ、その事か。これを見なさい」
“叔父さん”は額縁に入って居る、茶色く変色した紙を指差した。
「これはね、私達の叔父が書き遺してくれた物だよ」
「へぇ…これが、ねぇちゃ…いやいや…
主任が言っていた『大叔父の書き置き』ですか…!?」
額縁に入って居る手紙の、大書きされた幼い文字を目で追う、と…
鼓動が強く脈打った。
(あ、れ?この字…
見た事、あるぞ?)
…手紙の内容に全て目を通した後…
「な、なんか…こころが、あったかい、です…」
(懐かしい?恋しい?
何だろう、この気持ち…)
右手で胸元のポロシャツを握り、答える正一の目から涙が零れ落ちた…
「父と叔母から聞いた話をしよう。
『幼い頃は理解出来なかった。
が、大人になって漸く兄の行いが理解出来た。
私達への愛情が、そうさせたのだと…
大人になるまで、生きていく為にお金を使わせて貰った』」
最初のコメントを投稿しよう!