未来へ…

3/10
前へ
/31ページ
次へ
学生で居る間はタイムカードを押すだけで、“日勤で出勤”した事にしてくれ、学費は半額補助。 又、現場スタッフが不足し困らない様にと、常に人員補充され… 余りに好待遇である事に、正一は親類の経営(金銭面)が心配となり… 事務長に質問した。 そんな彼を事務長は理事長室へと連れて行った。 「し、失礼します…」 「おや、正一どうした?」 「“鬼軍曹”のシゴキが辛くて、避難してきたの?」 明らかに仕事中に抜け出して来た筈を、“叔父さん”と“叔母さん”(本当は甥と姪)は、笑顔で迎えてくれた。 事務長(甥の息子)は正一の質問を、二人の理事長へと話す。 「ああ、その事か。これを見なさい」 “叔父さん”は額縁に入って居る、茶色く変色した紙を指差した。 「これはね、私達の叔父が書き遺してくれた物だよ」 「へぇ…これが、ねぇちゃ…いやいや… 主任が言っていた『大叔父の書き置き』ですか…!?」 額縁に入って居る手紙の、大書きされた幼い文字を目で追う、と… 鼓動が強く脈打った。 (あ、れ?この字… 見た事、あるぞ?) …手紙の内容に全て目を通した後… 「な、なんか…こころが、あったかい、です…」 (懐かしい?恋しい? 何だろう、この気持ち…) 右手で胸元のポロシャツを握り、答える正一の目から涙が零れ落ちた… 「父と叔母から聞いた話をしよう。 『幼い頃は理解出来なかった。 が、大人になって漸く兄の行いが理解出来た。 私達への愛情が、そうさせたのだと… 大人になるまで、生きていく為にお金を使わせて貰った』」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加