18人が本棚に入れています
本棚に追加
“叔父さん”は一度言葉を切り、息をついた。
「『成人した後、私達は…
戦後、頑張って生きてきた方々の為に、何が出来るのかを話し合った。
そうして決めたのが、この施設を始める事だった』」
「人の為に残したお金だから、人の為に、ですか?」
未だ涙は止まらないが、正一は口を開く。
「『これこそが兄に報いる事ではないかと思った』と、父と叔母は言っていた」
“叔父さん”は笑顔のまま、話しを続ける。
「手紙に『お前達の喜びが、俺の喜びだから』とあるだろう?
これは企業理念の『あなたの喜びは、私の喜びです』の、元となった言葉だ」
「『兄の“人を思いやる心”を継承したい』と、叔父と母は言っていたの」
“叔母さん”が涙の止まらない正一に、ハンカチを手渡しつつ言葉を続けた。
「ありがとうございます…」
ハンカチを受け取り、涙を拭い…
正一は再び額縁へと目を向ける。
「心の高さって言うか、あの…
えっと…あ、“心懸け“?が凄いですね…」
言葉を余り知らない少年の気持ちを汲み、大人達は微笑した。
「この仕事は、お金と言う報酬を要求している以上は“偽善”だ。
だが…せめて行いは“人の為に成そう”と思う。
…父と叔母の受け売りだがね。
私達も、心からそう思っているよ」
「そうなんですね…
ホンット、凄いや。
あ…でも、お金は大丈夫なんですか?」
理事長達からの返答に感動しつつも、正一は当初の疑問を口にした。
その言葉に、理事長達は悪戯な笑みを浮かべる。
最初のコメントを投稿しよう!