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「我が施設はね、“優しい意思に護られている”んだよ。
毎年、宝くじの高額当選をしていてね、資金には全く困っていないから大丈夫なんだ」
「へ?それって、メッチャ、スッゴく…」
驚きの余りに言葉が出なくなった正一へ、“叔父さん”は笑顔のまま話す。
「だからこそ、私達は人の為に有らねばならないのだよ。
“優しい意思に報いる為に”」
…理事長室を後にした正一は、涙の止まらないまま廊下を歩いていた…
「どうだい?納得出来たかな?」
「はいっ。それで、もっと頑張りたくなりましたっ!」
涙をボロボロと零しつつも、正一は笑顔を向ける。
「そうかい。でも、君は美里の報告によると“働き過ぎ”らしいぞ?
程々にな」
「…はい…」
「鬼軍曹だが、超ベテラン介護士だからな。
アイツの言う通りにしていれば、先ず間違いは無いさ」
「…はい…」
(ねぇちゃん、仕事中って、人間変わっちまうからなぁ…)
美里の名を聞くなり、直立不動になった正一。
…“美里”とは…
“叔母さん”の娘である看護師長の長女で、二十歳の介護主任である。
技術も知識もピカイチで、仕事に厳しく人望有る頼もしい主任なのだが…
正一は何故か、非常に彼女を恐れており…
その様子をスタッフや入居者は、微笑ましく(?)見守っていた。
美里の名前に固まった正一の肩を、事務長は笑顔で叩き…
事務室へと戻っていった。
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