未来へ…

5/10
前へ
/31ページ
次へ
「我が施設はね、“優しい意思に護られている”んだよ。 毎年、宝くじの高額当選をしていてね、資金には全く困っていないから大丈夫なんだ」 「へ?それって、メッチャ、スッゴく…」 驚きの余りに言葉が出なくなった正一へ、“叔父さん”は笑顔のまま話す。 「だからこそ、私達は人の為に有らねばならないのだよ。 “優しい意思に報いる為に”」 …理事長室を後にした正一は、涙の止まらないまま廊下を歩いていた… 「どうだい?納得出来たかな?」 「はいっ。それで、もっと頑張りたくなりましたっ!」 涙をボロボロと零しつつも、正一は笑顔を向ける。 「そうかい。でも、君は美里の報告によると“働き過ぎ”らしいぞ? 程々にな」 「…はい…」 「鬼軍曹だが、超ベテラン介護士だからな。 アイツの言う通りにしていれば、先ず間違いは無いさ」 「…はい…」 (ねぇちゃん、仕事中って、人間変わっちまうからなぁ…) 美里の名を聞くなり、直立不動になった正一。 …“美里”とは… “叔母さん”の娘である看護師長の長女で、二十歳の介護主任である。 技術も知識もピカイチで、仕事に厳しく人望有る頼もしい主任なのだが… 正一は何故か、非常に彼女を恐れており… その様子をスタッフや入居者は、微笑ましく(?)見守っていた。 美里の名前に固まった正一の肩を、事務長は笑顔で叩き… 事務室へと戻っていった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加