18人が本棚に入れています
本棚に追加
正一は事務長の後ろ姿を見送った後…
目元を拭い、ガッツポーズを取る。
「さて、頑張るぞっ!」
気合い充分に廊下を早足で(走ってはいけないので)行く途中…
突然、3m先にあるスタッフ食堂から、美里が腕組みをして登場。
「はうっ!?」
相手の姿を見るなり、正一は急停止した。
「しょう~いちぃ~。
ご飯も食べないで、アンタは、なぁぁ~にお、してんのぉ?
コッチ来なさい」
鬼の形相(正一ビジョン)で、美里は手招きしてきた。
(何で、皆、ねぇちゃんを“美人”って言うんだ?
般若の顔ぢゃん…
コワすぎて、心臓止まりそ…)
「あぅ、あぅ…は、はぃぃ~」
正一は手招きのタイミングに合わせ。
何かの力で引っ張られる様に、ヨタヨタと近付いていく…
「ホラ、座って」
言われた席の椅子をひき、正一は座る。
「食べなさい」
お茶と丼に大盛りになったご飯がトレーに乗った、“昼定食”を美里は運んできてくれた。
「ありがとうございます!頂きます!!」
元気に返事をし手を合わせる。
…勢い良く食事をする正一の向かいの席に座り。
美里は笑顔で食事の様子を見守っていた…
「ごちそうさまでした!」
食後、お茶をすする正一に、美里はニタッと笑った。
「アンタ、一体、何処行ってたの?」
「ええっと…お金が心配で…その…」
口ごもる正一の額を、美里は痛くない力加減で叩いた。
「へ?」
「施設内で“私の耳に入らない出来事”なんて、無いの。
隠し事なんて、絶対に、無理、だからね?」
「はうっ…」
最初のコメントを投稿しよう!